2.2 井戸型ポテンシャル内の一次元自由粒子

(2.2.1)

 一次元の Schrödinger 方程式 (2.2.1) において,前節の自由粒子では常にポテンシャルエネルギー V を0とおいて計算した。

 ここでは,0 < x < a の範囲で V = 0,x ≤ 0,xa の範囲で V = ∞ となる場合を考える。

 0 < x < aでは,(2.2.1) は (2.1.4) と同一であり,その一般解は (2.1.8),または (2.2.2) で表される。

(2.2.2)

 x ≤ 0,x ≥ a の範囲では ψ = 0 (粒子の存在確率が0)で,かつ,ψ は連続関数でなければならないので,(2.2.2) より

(2.2.3)

さらに,

(2.2.4)

となることから

(2.2.5)

の関係式が得られる。ここで,n = 0 では ψ は常に0となるため無意味であり,n が負の整数の場合も ψ の符号が変わるだけで n が正の場合と同じ状態を表すので考慮しなくてよい。

 (2.2.5) を変形するとエネルギーが求められ,

(2.2.6)

となる。(2.2.6) はエネルギー En が0以上の任意の値ではなく離散値をとることを示している。

 (2.2.3),(2.2.5) を (2.2.2) に代入すると,

(2.2.7)

となる。規格化条件

(2.2.8)

より B' を求めると

(2.2.9)

である。したがって,波動関数は

(2.2.10)

である。

 古典的な自由粒子は 0 < x < a の範囲に一様に存在しているが,量子数 n が 1 のときは,x = 0.5a で存在確率が最大になる(|ψ|2 が存在確率を表す)ことに注意する。

 n が大きくなると,存在確率は一様になり古典的粒子に近づく。

 エネルギーの単位 h2/8ma2 は,a = 1 cm の中にある水素分子を例にとると,m = 2 × 1.661 × 10-27 kg より,1.653 × 10-37 J と計算される。この値は,回転運動のエネルギー単位(3.3 節)と比べて 10-16 も小さいので,事実上エネルギーは連続的な値をとると考えてよい。

Revised: 2007-07-02

(2.1.8) から (2.2.2) への変形には Euler(オイラー)の公式

を利用する。