2.3 箱の中の三次元自由粒子

 ここでは,前節の一次元の系を三次元に拡張して考える。

箱の中: V = 0
箱の外: V = ∞

ポテンシャルエネルギー Vx, y, z 成分の和とおく。

(2.3.1)

Vx = 0 (0 < x < a)
Vx = ∞ (x ≤ 0,xa)
Vy = 0 (0 < y < b)
Vy = ∞ (y ≤ 0,yb)
Vz = 0 (0 < z < c)
Vz = ∞ (z ≤ 0,zc)

 三次元の Schrödinger 方程式は (2.3.2) である。

(2.3.2)

 いま,粒子は自由運動をしているので,x, y, z の各方向の運動は互いに独立している。したがって,波動関数 ψx, y, z のそれぞれの一次元関数の積の形における(変数分離)。

(2.3.3)

 (2.3.1),(2.3.3) を (2.3.2) に代入すると,(2.3.4) となる。

(2.3.4)

 (2.3.4) の z に依存する項のみを移項することが可能であり,(2.3.5) のように変形できる。

(2.3.5)

 (2.3.5) の左辺は xy,右辺は z のみに関係しているので,両辺はある定数に等しい。その定数を k とおくと,z に関する式は (2.3.6) になる。

(2.3.6)

 さらに,(2.3.8) にしたがって kEz に置き換えて (2.3.6) を変形すると,一次元の式 (2.2.1) と同じ形の (2.3.7) になることがわかる。

(2.3.7)

ただし,

(2.3.8)

 (2.3.7) を (2.3.5) に代入すると,xy についても同様の手続きで (2.3.9) のように変数分離できる。

(2.3.9)

 全エネルギー E が (2.3.10) のように x, y, z 成分の和に表されるとすると,

(2.3.10)

(2.3.9) より,(2.3.7) と同様の x, y についての式 (2.3.11),(2.3.12) を得る。

(2.3.11)

(2.3.12)

 (2.3.7),(2.3.11),(2.3.12) の解は (2.2.1) の解 (2.2.10) と同様であり,したがって

(2.3.13)

エネルギーは (2.2.6) より

(2.3.14)

と求められる。

Revised: 2007-07-02