1.3 角運動量演算子の交換関係

 ここで,角運動量の成分同士の交換関係を調べておく。一般に,関数 ψ に2つの演算子 を作用させる場合,作用させる順番を入れ替えても結果が同じになるとは限らない。

(1.3.1)

 演算子間の交換関係を表すために,(1.3.2) のような交換子を定義する。

(1.3.2)

  のとき, は可換であるという。一般に,古典物理量に対応する演算子 が可換ならば,同時にこれらの確定値(固有値)をとる状態(固有関数)が存在する。角運動量の x 成分と y 成分の間の交換関係を調べると,

(1.3.3)

(1.3.4)

(1.3.5)

となり,可換ではない。同様に,

(1.3.6)

(1.3.7)

である。(1.3.5) 〜 (1.3.7) は,角運動量の xyz 成分の中の2成分を同時に決めることはできないことを示している。一方,角運動量の2乗と角運動量の x 成分は,

(1.3.8)

のように可換であり,y 成分,z 成分に対しても同様である。すなわち,角運動量の2乗と角運動量の xyz 成分の中のどれか1つは同時に決定できる。

(1.3.9)

(1.3.10)

 いま,z 成分に注目し, に共通の固有関数を ψ の固有値を λ の固有値を μ とすると,

(1.3.11)

(1.3.12)

が成り立つ。(1.3.11),(1.3.12) を満たす ψλμ をこれから求めていくことにする。

Revised: 2007-07-02