5 水素類似原子

5.1 水素類似原子の古典的エネルギー

水素類似原子 = 一電子原子 (H, He+, Li2+, etc.)

原子核: 電荷 Ze,質量 M
電子: 電荷 -e,質量 me
核−電子間距離: r

原子の重心の座標: (X, Y, Z)

原子の内部座標: (x, y, z)

 水素類似原子では Schrödinger 方程式が厳密に解ける。まず,古典的エネルギーがどのように表されるか,みていくことにする。

 剛体回転子の原子1を電子,原子2を原子核に置き換えると,水素類似原子の場合も途中まで似たような手続きで解くことができる。ただし,剛体回転子の場合とは,

  • 核−電子間距離 r が一定ではない

  • ポテンシャルエネルギー V が0ではない(核と電子の間のクーロンエネルギー)

の点で異なる。

原子の全エネルギー H

(5.1.1)

核と電子の運動エネルギー T

(5.1.2)

ただし,

  (速度)

(5.1.3)

  (換算質量)

(5.1.4)

 (5.1.2) の第1項は原子全体の並進運動エネルギー,第2項は原子の内部運動エネルギーである。核の質量 M は電子の質量 me よりはるかに大きいため,換算質量 μ はほぼ me に等しい。したがって,(5.1.2) は (5.1.5) のように書くことができる。

(5.1.5)

ポテンシャルエネルギー V

 ポテンシャルエネルギーは,距離が r である電荷 +Ze の粒子(核)と電荷 -e の粒子(電子)間のクーロンエネルギーであるから,次の式で表される(SI 単位系で表した場合)。

(5.1.6)

ここで,ε0 は真空の誘電率で,8.8542 × 10-12 F m-1 である。

Revised: 2007-07-02

cgs 単位系では,クーロンの法則に係数が含まれないように単位が定義されるので,クーロンポテンシャルは
 
である。