5.3 水素類似原子の波動関数とエネルギー(1)

 電子についての Schrödinger 方程式

(5.2.6)

または,演算子(ラプラシアン)の記号を使って

(5.3.1)

を解く際にも,剛体回転子のときと同様に極座標に変換する。

 ラプラシアンの極座標表示は

(5.3.2)

なので,Schrödinger 方程式は

(5.3.3)

となる。電子波動関数 ψ を,次の (5.3.4) のように,長さ r のみに依存する R(r) (動径分布関数)と角度 θ, φ のみに依存する Y(θ,φ) (球面調和関数,角運動量や剛体回転子の計算で出てきたものと同じ)の積に変数分離すると,(5.3.3) は (5.3.5) のように書ける。

(5.3.4)

(5.3.5)

 (5.3.5) の左辺は r のみ(動径部分),右辺は θφ のみ(角度部分)の関数なので,両辺に等しい定数が存在する。実際,右辺は,既に求められている角運動量の2乗に関する式

(5.3.6)

を利用すると,l(l + 1) に等しいことがわかる。したがって,(5.3.5) の左辺より,r に関する式は

(5.3.7)

となる。ここで注意すべきことは,電子エネルギー Er のみに関する (5.3.7) を解くことで得られるということである。(5.3.7) は V(r) が (5.1.6) のようなクーロンポテンシャル,すなわち V(r) = -Ze2/4πε0r の場合のみ解け,解は次のようになることが知られている(解法は省略)。

(5.3.8)

  (規格化定数)

(5.3.9)

ただし,

(5.3.10)

  (Bohr 半径)

(5.3.11)

 ここで, は Laguerre(ラゲール)の陪多項式とよばれるもので,(5.3.12) で表される。(5.3.12) の は (5.3.13) で表される Laguerre の多項式である。

(5.3.12)

(5.3.13)

 また,電子エネルギーは

(5.3.14)

である。

Revised: 2007-07-02

cgs 単位系では,Bohr 半径は
 
である。

cgs 単位系では,電子エネルギーは
 
である。