10 時間を含む摂動法

10.1 時間を含む摂動法の基礎

 光などの電磁波の放出や吸収を扱う問題では,Hamiltonian や波動関数が時間 t に依存した Schrödinger 方程式を出発点とする(q は電子の座標(スピン座標も含む)を表す)。

(10.1.1)

 いま,Hamiltonian の時間依存部分を摂動項と考えることにする。

(10.1.2)

  の固有関数群を とし,規格直交系を成しているとする。

(10.1.3)

(10.1.4)

 時間 t だけ摂動を受けた後の波動関数 を既知である定常状態の波動関数 で展開する。すなわち

(10.1.5)

とする。時間依存の係数 cn(t) を求めることが,ここでの命題となる。(10.1.2) と (10.1.5) を (10.1.1) に代入すると,

(10.1.6)

となり,

(10.1.7)

となる。(10.1.3) を (10.1.7) に代入して

(10.1.8)

を得る。(10.1.8) の両辺に左から を掛けて空間座標について積分すると,

(10.1.9)

となるが, は規格直交系であるため,(10.1.4) にしたがって (10.1.9) の右辺を整理すると,cm(t) に関する式

(10.1.10)

を得る。(10.1.10) では右辺にも cn(t) が含まれているので,このままでは cm(t) について解くのは困難である。それで,以下に述べるような近似を行う。

 いま,t = 0 のときの状態が n,すなわち,cn = 1,cm = 0 (mn) で

(10.1.11)

であるとし,時間 t まで摂動 が加わってある状態に変化したとする。十分短い時間内では,やはり cn ≈ 1,cm ≈ 0 (mn) とみなすことができるので,(10.1.10) は次のように書ける。

(10.1.12)

Revised: 2007-07-05