高分子の階層構造と物性・機能との関係解明
高分子は、モノマーと呼ばれる低分子がおよそ100以上の結合を繰り返して連結した巨大分子であり、特徴的なひも状の“かたち”(分子鎖形態)を有しています。例えば、非晶状態や溶液中ではランダムコイル、ゲル・エラストマーではネットワーク状、結晶中では折り畳み鎖などです。
一方で、高分子鎖には分子鎖間の相互作用が働くことで、高分子は上記のÅ〜nmスケールの分子鎖形態に加えて、nm〜μmスケールに及ぶ高次構造を形成します。高分子材料の化学的性質はモノマーの化学的性質により決定されますが、物性や機能はこの複雑な階層構造により決定されます。しかし、その関係解明は容易ではありません。
例)結晶性高分子中の階層構造
現在では、日用品から先端材料まで、多種多様な用途で高分子は用いられていますが、その基本的な設計指針は、いかにこの複雑な階層構造を最適化するかによっています。本研究室では、高分子の溶液、ゲル・エラストマー、結晶などのさまざまな状態における階層構造や化学的性質の制御を行うだけでなく、それらによる物性・機能の向上がどのように実現されているのかを分子論的に明らかにし、さらなる高性能化のための基礎的指針の確立を目指します。
近年の具体的な研究例としては、以下のものが挙げられます。
・結晶性高分子との相溶IPNの形成によるゴムの同時的な高弾性・高強度・高延性化と多機能化
・環境調和性の高い手法によるセルロースナノファイバーの難燃化と複合化
・微量の水による疎水性高分子溶液への共良溶媒性
・多糖水溶液の新規な相挙動と食品分野への展開を見据えたゲル化挙動の解明