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令和元年-二年度岡山理科大学プロジェクト研究推進事業
「物理化学的アプローチによるナノセルロースの利活用技術の開発」


研究代表者:大坂昇(理学部 化学科)
研究分担者:竹崎誠(工学部 バイオ・応用化学科)


本プロジェクトの背景と目標
ナノセルロースは木材などの植物をナノメートル単位までの直径に解きほぐしたセルロース集合体である。鋼鉄の1/5の軽さで5倍以上の優れた力学特性をもつ。特に、植物資源であることから日本の豊富な森林資源の有効な利活用技術になり得ると期待できる。本プロジェエクトでは倉敷芸術科学大学の岡田賢治教授が開発した難燃性リグノナノセルースを基盤にしてその利活用技術を開発することを目的とする。


プロジェクトの進捗状況:以下にこれまでに得られた代表的な成果を示す。
(1)難燃性リグノナノセルースを用いた高分子複合材料への展開(令和元年-二年度)
難燃性リグノナノセルロースの作製を行い、難燃剤の存在や修飾反応後もナノセルロースの形状を維持していることを確認した(図1)。また、従来の樹脂への添加だけでなく、他用途への展開を見据えて様々な溶媒での分散性の評価を行った。
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      図1:難燃性ナノセルロースのSEM画像


(2)ナノセルロースによるアクリルゴムの高性能化(令和元年-二年度)
アクリルゴムに塩酸処理で作成した未修飾ナノセルロースを添加するだけで、破断みずみは減少するが破断応力が10MPaに達する値まで増加することが明らかにされた。また、耐油性の評価として燃料油にナノセルロース/アクリルゴムを含浸させたところ、ナノセルロースの添加で膨潤率が減少することが明らかにされた。これらの成果に対しては現在論文を投稿中である。
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  図2:ナノセルロース/アクリルゴムの応力ひずみ曲線      図3:燃料油に対するナノセルロース/アクリルゴムの膨潤率


(3)ナノセルロースによる物理ゲルの高性能化(令和元年度)
高分子水溶液に官能基量を変化させたナノセルロースを添加することでゲル化温度と弾性率を変化させた物理ゲルが作成できることを明らかにした(図2)。
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図4:ナノセルロースの官能基の量に依存した高分子水溶液のゲル化温度


(4)ナノセルロース-異型金ナノ粒子ハイブリッドの合成(令和元年-二年度)
金ナノ粒子は形状やサイズに依存して光吸収や発光促進作用を大きく増幅することが知られている。ナノセルロースの存在下で金ナノ粒子を合成すると図3にあるように異なる外観を呈した。

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図5:ナノセルロースの添加の有無による金ナノ粒子溶液の外観の違い(左端から1番目と3番目がナノセルロースあり)